純金インゴットや金製品を保有していて、まとまった現金が必要になった場面。「いっそ売却するか、質屋に預けて借りるか」で迷う方は多いです。
本記事では、金価格が1年後に1.2倍・1.5倍・0.9倍の3シナリオで、売却と質入れの損得を純金100g・500g・1kgの規模別にシミュレーションし、保有を続けながら現金化する選択肢の経済合理性を解説します。
本記事は質屋ガイド編集部が、田中貴金属工業・三菱マテリアル・地金商の公開価格データ、質屋営業法、関連税法に基づいて作成しています。金価格は変動するため、最新の店頭価格で実額をご確認ください。
金の売却と質入れの基本構造
売却の仕組み
金製品(インゴット・コイン・宝飾品)を地金商・買取業者・質屋などに売却し、現金を受け取ります。所有権は完全に手放す ため、後日同じものを取り戻すことはできません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受取金額 | 査定額(買取価格) |
| 後日の買い戻し | 不可(同じ品物を再購入する場合は店頭販売価格) |
| 税務 | 譲渡所得対象(保有期間・金額により課税) |
| 名義 | 所有権が買取業者に移転 |
質入れの仕組み
金製品を質屋に預け、その価値の一部を融資として受け取ります。元金+利息を返済すれば品物が戻ります 。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受取金額 | 査定額の60〜80%程度(融資額) |
| 返済期限 | 通常3か月(延長可能な店舗もあり) |
| 利息 | 月利1.5〜9%(業界平均) |
| 期限超過 | 質流れ(品物は質屋の所有に) |
| 税務 | 質入れ時は所得・譲渡なし、質流れ時は譲渡所得 |
売却と質入れの選択軸
| 軸 | 売却が有利 | 質入れが有利 |
|---|---|---|
| 金価格の見通し | 下落予想 | 上昇予想 |
| 保有意向 | 不要 | 残したい |
| 必要期間 | 永続 | 短期1〜3か月 |
| 受取金額 | 100% | 査定額の60〜80% |
| 税務 | 譲渡所得発生 | 質入れ時は発生せず |

金価格3シナリオでのシミュレーション
前提条件
- 純金100g(買取価格 1g=10,000円換算で100万円)
- 売却額: 100万円(手数料・税金は除外)
- 質入れ額: 80万円(査定額の80%)
- 質屋の月利: 3%(業界平均値)
- 期間: 1か月後に買戻し or 売却後に買い直し
シナリオA: 1年後に金価格が1.2倍に上昇(純金100gの場合)
| 項目 | 売却 | 質入れ |
|---|---|---|
| 当初現金化額 | 100万円 | 80万円 |
| 1か月後の手元 | 100万円 - 0円 = 100万円 | 80万円 - 利息24,000円 = 776,000円 |
| 1年後の金100g価値 | 0円(売却済) | 120万円(保有継続) |
| 1年後の総資産 | 100万円 - 買い直し時のコスト | 80万円(融資現金)+ 1.2倍の金 - 利息 - 元金返済 |
1年後に1.2倍 なら、売却した場合は買い直すために120万円が必要です。一方、質入れの場合は元金80万円+利息24,000円を1か月後に返済し、金100gはそのまま手元に残ります。1か月だけ80万円を借りて使い、24,000円の費用負担で金は値上がりの恩恵を受けられます。
シナリオB: 1年後に金価格が1.5倍に上昇
| 項目 | 売却 | 質入れ |
|---|---|---|
| 当初現金化額 | 100万円 | 80万円 |
| 1年後の金100g価値 | 0円 | 150万円 |
| 1年後の損益 | 100万円のまま(金は失う) | 元金返済済→150万円分の金を保有 |
1.5倍シナリオ では、売却の機会損失は50万円。質入れなら短期借入の利息24,000円のみで、150万円分の金を保有し続けられます。
シナリオC: 1年後に金価格が0.9倍に下落
| 項目 | 売却 | 質入れ |
|---|---|---|
| 当初現金化額 | 100万円 | 80万円 |
| 1年後の金100g価値 | 0円(売却済) | 90万円 |
| 売却後の買い直しコスト | 90万円で買い直し可能 | 該当せず |
0.9倍シナリオ では、売却して90万円で買い直すと10万円の利益が出ます。一方、質入れは元金返済+利息24,000円を負担し、90万円分の金を保有することになります。
下落シナリオでは売却が有利ですが、金は世界経済の不安定期に資産防衛として買われやすい性質があるため、長期下落予想は限定的です。

規模別シミュレーション(短期1か月の質入れ)
純金100g(評価100万円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 質入れ融資額(査定80%) | 80万円 |
| 1か月利息(月利3%) | 24,000円 |
| 1か月後の元金+利息返済 | 824,000円 |
| 質入れの実質コスト | 24,000円 |
純金500g(評価500万円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 質入れ融資額(査定80%) | 400万円 |
| 1か月利息(月利3%) | 120,000円 |
| 1か月後の元金+利息返済 | 412万円 |
| 質入れの実質コスト | 120,000円 |
純金1kg(評価1,000万円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 質入れ融資額(査定80%) | 800万円 |
| 1か月利息(月利3%) | 240,000円 |
| 1か月後の元金+利息返済 | 824万円 |
| 質入れの実質コスト | 240,000円 |
1か月の質入れコスト は融資額の3%程度。金価格が1か月で3%以上上昇する局面では、質入れによる「保有継続+短期借入」が経済合理性を持ちます。
売却を選ぶべきケース
金の保有意向がない
「相続で受け取った金製品が好みでない」「資産配分を見直したい」など、保有を継続する意向がない場合は売却が合理的です。
1年以上の長期資金が必要
質屋の利息(月利1.5〜9%)は 1年で18〜108% の年利換算となり、長期借入は経済合理性が低下します。1年以上の資金需要なら売却を検討しましょう。
金価格が長期下落トレンド
世界経済が安定期に入り、金の安全資産需要が低下する局面では、長期下落予想が立つ場合があります。このときは売却+下落後の買い直しが有利です。
譲渡所得の特別控除を活用したい
金を売却した際の譲渡所得は、5年超保有で長期譲渡所得となり、特別控除50万円を活用できます。短期譲渡(5年以内)は控除対象外。長期保有後の売却 は税務上有利です。
質入れを選ぶべきケース
金の保有を続けたい
相続品・記念品・資産防衛など、金を手放したくない場合は質入れが唯一の選択肢です。
短期1〜3か月の資金が必要
質屋の利息は短期利用なら 月利1.5〜9% で済みます。1か月3%なら100万円借入で3万円の利息、3か月で9万円程度です。
金価格が上昇トレンド
地政学リスク・インフレ・通貨不安など、金価格上昇要因が複数ある局面では、質入れによる「保有継続+短期借入」が圧倒的に有利です。
譲渡所得を発生させたくない
金の売却は譲渡所得の対象となり、保有期間・金額によっては課税されます。質入れは譲渡なし のため、税務上の影響を回避できます。

注意すべき点
よくある質問
Q1. 金は売却と質入れ、どちらが得ですか?
A. 金価格の上昇予想・保有意向がある場合は質入れが有利、下落予想・保有意向がない場合は売却が有利です。短期1〜3か月の資金需要なら質入れ、1年以上の長期資金なら売却が一般的です。
Q2. 質入れの融資額は売却価格の何%ですか?
A. 一般的に査定額の60〜80%が融資額となります。100万円の金なら60〜80万円の融資です。残り20〜40%は質屋のリスクバッファ+金価格変動の余裕枠です。
Q3. 金を質入れすると税金はかかりますか?
A. 質入れ時は譲渡ではないため税金はかかりません。ただし、返済できずに質流れとなった場合は譲渡所得が発生します。詳細は税理士にご確認ください。
Q4. 金の質入れ利息はどれくらいですか?
A. 月利1.5〜9%(業界平均)です。100万円借入なら月1.5〜9万円。短期1〜3か月利用なら数万円〜数十万円で済みます。複数の質屋で利率比較を行いましょう。
Q5. 金価格が下落したら質入れは損ですか?
A. 下落シナリオでは売却+買い直しのほうが有利です。ただし、質入れは元金+利息で買戻しが約束されているため、「下落しても保有を続けたい」場合は質入れの選択肢があります。
Q6. 質入れ期間中に金価格が上昇したらどうなりますか?
A. 担保品の価値が上がるため、質屋によっては追加融資(増融資)に応じてくれる場合があります。元金返済額は契約時のままです。
Q7. 売却した金を後日買い直すことはできますか?
A. 同じ品物(特定のインゴットや宝飾品)の買い直しは原則不可ですが、同重量の金地金を市場価格で再購入することは可能です。ただし価格上昇時は損失が拡大します。
Q8. 金1kg以上の大型インゴットも質入れできますか?
A. 多くの質屋で対応可能です。500g・1kgインゴットの査定額は400〜800万円規模の融資となるため、店舗の融資上限・現金準備状況を事前確認しましょう。
Q9. 譲渡所得の特別控除50万円とは何ですか?
A. 5年超保有した金の売却益から年50万円が控除される税制です。短期譲渡(5年以内)は対象外。長期保有後の売却 は税務上有利になります。
Q10. 質流れになった場合の課税はどうなりますか?
A. 質流れは「品物の譲渡」と税務上扱われ、譲渡所得が発生します。保有期間・金額により短期/長期譲渡所得の区分が適用されます。詳細は税理士にご確認ください。
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まとめ
金の売却と質入れは、金価格の見通し・保有意向・必要期間で選択軸が分かれます。上昇予想+保有継続+短期1〜3か月 なら質入れ、下落予想+保有意向なし+長期 なら売却が経済合理的です。
金価格が1か月で3%以上上昇する局面では、質入れの利息(月利3%程度)を上回る値上がり益が見込めるため、保有継続+短期借入の選択肢が魅力的になります。地政学リスク・インフレ・通貨不安など、金価格上昇要因が複数ある現在の環境では、質入れの相対的メリットが高い時期と言えます。
質屋は金製品を担保にした即日現金化が可能で、信用情報に登録されません。お住まいの近隣の質屋で査定額・利率を確認しておくと、必要時の意思決定がスムーズになります。
最終更新日: 2026-04-29 本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な状況に応じた判断は専門家にご相談ください。



