金(ゴールド)の価格は 2020 年以降、歴史的な高値を更新し続けています。インフレ・円安・地政学リスクを背景に、金を資産として保有する方が増えています。
そんな中で「一時的に現金が必要だが、今売るのはもったいない」と感じている方は多いはずです。本記事では、金を 売らずに 現金化する方法として、質入れの仕組み・買取との損益比較・追加融資の仕組みまで、実務的に解説します。
なぜ今、金を売るのがもったいないのか
金価格の歴史的な推移
金の国内小売価格は、過去10年で大きく上昇してきました。2015年頃に 1g あたり 5,000 円前後だった価格が、2026 年現在では 1g あたり 1 万円を超える水準で取引されています。背景には以下の要因があります。
- 世界的なインフレ懸念
- 円安による輸入コストの上昇
- 地政学リスク(紛争・経済制裁)
- 各国中央銀行による金の買い増し
- 現物資産への関心の高まり
過去の売却例を振り返ると、「数年前に売ってしまった金の価値が今は2倍になっている」というケースも珍しくありません。

買取で売却すると発生する機会損失
金を買取店で売却した場合、その時点で所有権は店舗に移転します。その後いくら金価格が上昇しても、利益を享受するのは買取店です。
シミュレーション: 金インゴット 100g(取引時価 100 万円)を売却 vs 質入れ
| 選択 | 取引時 | 1年後(金価格 +30% と仮定) | 実質損益 |
|---|---|---|---|
| 買取で売却 | 100 万円受取 | 何も残らない | −30 万円 の機会損失 |
| 質入れで借入 | 100 万円借入(月利 1%) | 112 万円返済 → 130 万円相当の金が戻る | +18 万円 の実質利益 |
金価格が 30% 上昇するケースでは、質入れの方が 48 万円分も得 になります。金の値上がり傾向が続く限り、売却はほぼ常に不利な選択です。
質屋ならではの「追加融資」という裏技
金価格上昇時の追加融資の仕組み
金を質入れした後、金価格が上昇した場合、多くの質屋では 同じ品物を再査定して追加融資 を受けることができます。

例: 金 100g を預けて 100 万円借入 → 半年後に金価格が +25%
- 預け時点の評価:1,000,000 円(100g × 1 万円)
- 半年後の評価:1,250,000 円(100g × 1 万 2,500 円)
- 追加融資可能額:最大 250,000 円(差額分)
つまり、同じ金を預けたまま、上昇分を先取りして現金化できる ということです。これは他の金融商品にはない質屋独自のメリットです。
追加融資を受ける条件
一般的には以下の条件が必要です。
- 初回借入時の返済が遅延していない
- 金の市場価値が明確に上昇している
- 店舗側の融資可能枠に余裕がある
すべての質屋が対応しているわけではないため、金の取扱実績が豊富な質屋 を選ぶことが重要です。
売却と質入れの税金面での違い
譲渡所得税のリスク(買取の場合)
金を売却した場合、譲渡所得税の対象になる可能性があります。具体的には:
- 保有期間 5年以下 の場合:短期譲渡所得(総合課税)
- 保有期間 5年超 の場合:長期譲渡所得(総合課税、1/2課税)
- 年間の譲渡益が 50 万円を超える と申告が必要
例えば 200 万円で購入した金を 300 万円で売却すれば、差額 100 万円が譲渡益となり、条件次第で数十万円の税金が発生することもあります。
質入れなら課税関係なし
質入れは 借入 であり、所有権の移転を伴いません。そのため譲渡所得税の対象外です。短期の資金調達目的であれば、税務的にも質入れの方がシンプルです。
ただし、質流れになった場合は実質的な売却とみなされ、譲渡所得税の対象となる可能性があります。高額取引の場合は 税理士への相談 を推奨します。
金の質入れに対応する品物の種類
金に関連する幅広い品物を質入れできます。
インゴット(地金)
- 田中貴金属・三菱マテリアル・徳力本店 などの刻印があるインゴット
- 100g、500g、1kg などの標準サイズが査定しやすい
- 田中貴金属の保証書が付属していると有利
金製品・ジュエリー
- K24(純金) :相場に近い金額で査定
- K18 :純金の 75% 相当で査定
- K14 / K10 :割合に応じて減額
- ネックレス、ブレスレット、リング、コイン等
金貨・記念メダル
- ウィーン金貨・メイプルリーフ金貨・カンガルー金貨 などの国際的な金貨
- 日本の記念金貨・メダル
- 流通量の多い金貨ほど査定が早い
金の質入れ金利シミュレーション
金の質入れ時の注意点
純度と重量が査定の基準
金の査定は 純度(K○○) と 重量(g) がすべてです。以下を準備して持参するとスムーズです。
- 純度の刻印が見える状態(汚れを軽く拭き取る)
- 重量が分かる場合は事前に把握
- 付属品(保証書・鑑定書・購入時レシート)
価格連動の査定
金の査定額は その日の国内小売価格 に連動します。査定タイミングによって数 % 変動する可能性があるため、急激な相場変動時は注意が必要です。
相場変動リスク
金は基本的に上昇傾向ですが、短期的には下落することもあります。下落局面で預けた場合、追加融資が受けられない、あるいは査定額が当初より下がる可能性もあります。
長期預け入れ時の利息累積
質屋は短期利用向けのサービスです。1年以上預けると利息が累積し、金の値上がり分を上回ってしまうこともあります。3〜6ヶ月以内の利用 を基本に考えるのが健全です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 金を質入れするのと、金を担保にした銀行融資はどちらが有利ですか?
A. スピードと柔軟性では質屋が優位です。銀行の金担保融資は審査に数日〜数週間かかり、信用情報機関への照会もあります。一方、質屋は即日対応で信用情報に一切影響しません。ただし、長期(半年以上)で低金利を重視するなら銀行融資の方が有利なケースもあります。
Q2. 金のアクセサリーでも質入れできますか?
A. はい、K18 以上のネックレス・ブレスレット・リングなどは広く受け付けられています。ただし K14 や K10 などの低純度の場合は査定額が大きく下がります。石入りのジュエリーは、石の価値が別途加算される場合もあります。
Q3. 金地金の保証書がない場合でも借りられますか?
A. 借入は可能ですが、保証書があると純度・メーカーの証明になるため査定が有利になります。田中貴金属・三菱マテリアルなどの保証書付きインゴットは市場での信頼性が高く、最高クラスの査定が期待できます。
Q4. 金価格が下落している時に質入れしても大丈夫ですか?
A. 下落局面では査定額も下がります。急ぎでない場合は、相場が落ち着くタイミングを待つのも一つの方法です。ただし「今すぐ現金が必要」な緊急時には、相場に関わらず質入れが有効な選択肢となります。
Q5. 追加融資は必ず受けられますか?
A. 店舗方針により異なります。すべての質屋が対応しているわけではないため、事前に「価格上昇時の追加融資に対応していますか?」と確認するのが確実です。取引実績が豊富な大手質屋や、金の取扱に強い店舗ほど対応しています。
Q6. 金の質入れは信用情報に影響しますか?
A. 影響しません。質屋は質屋営業法に基づく業態で、貸金業法の対象外です。CIC・JICC・KSC への登録は一切なく、住宅ローンや自動車ローン等の審査に影響しません。詳しくは 信用情報に載らないお金の借り方5選 をご覧ください。
Q7. 質流れになったら税金はかかりますか?
A. 質流れは実質的な所有権移転となるため、譲渡所得税の対象になる可能性があります。年間の譲渡益が 50 万円を超える場合は申告が必要になることがあります。高額の質流れが想定される場合は、税理士に相談しましょう。
まとめ:金は「売る」より「預ける」が時代の正解
金価格が長期的に上昇している現在、売却という選択肢は 機会損失を確定させる行為 と言えます。一時的な資金需要であれば、質入れを選ぶことで以下のメリットを享受できます。
- 値上がり益を逃さない:利息は借入時に固定
- 追加融資の可能性:価格上昇時に同じ品物で再査定
- 税金面で有利:譲渡所得税の対象外
- 信用情報に影響なし:将来のローン審査に完全中立
- 即日現金化:銀行融資より圧倒的に速い
金を保有している方にとって、質入れは 資産を守りながら資金繰りを解決する 最も合理的な選択肢です。
質屋の基本的な仕組みは 質屋が初めての人向け完全ガイド を、質屋と買取の違いは 質屋と買取の違いを徹底比較 をご覧ください。
参考文献・出典
- 質屋営業法(e-Gov法令検索)
- 国税庁「金地金の譲渡による所得について」
- 田中貴金属工業 公表価格
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の投資・税務相談を提供するものではありません。金価格は日々変動し、将来の値動きを保証するものではありません。実際の金利・査定額は店舗・その時点の相場によって異なります。高額取引や税務判断を伴う場合は、税理士等の専門家への相談を推奨します。
最終更新日: 2026年4月11日



