パテック・フィリップ・オーデマ・ピゲ・ヴァシュロン・コンスタンタン——いわゆる「3大時計ブランド」は、定価1000万円超のモデルも珍しくなく、中古相場では2000-3000万円台に達するピースもあります。これほど高額な時計を担保にする際、多くの方が「対応できる質屋があるのか」「査定額はどう決まるのか」を不安に感じます。さらに、相場が上昇局面にある銘柄ほど「いま売ると値上がり益を取り損なう」「シリアルが中古市場に出てしまう」といった懸念も無視できません。本記事では、3大ブランドのモデル別相場目安と、超高額帯の査定に強い質屋の選び方、そして売却ではなく質入れを選ぶ意義を整理します。

3大ブランドの基本相場

超高額時計の質入れを検討する前に、各ブランドの中古相場を理解しましょう。

パテック・フィリップ

独立資本の最高峰として知られるブランド。代表モデルは以下の通りです。

モデル定価帯中古相場
ノーチラス 5711380万円1500万-3000万円
アクアノート 5167280万円800万-1500万円
カラトラバ 5227380万円400万-700万円
グランドコンプリケーション1000万円〜2000万円〜

ノーチラス5711は生産終了による供給ショックで相場が高騰し続けています。

オーデマ・ピゲ

ロイヤルオークシリーズが市場の中心。

モデル定価帯中古相場
ロイヤルオーク 15500ST350万円700万-1200万円
ロイヤルオーク オフショア400万円500万-1500万円
コードエコー1159600万円800万-1500万円

ロレックスモデル別相場記事と異なり、オーデマ・ピゲは個体差が大きい点に注意。

ヴァシュロン・コンスタンタン

世界三大時計の一角で、安定した中古相場が特徴。

モデル定価帯中古相場
オーバーシーズ 4500V300万円400万-700万円
パトリモニー 81180250万円200万-350万円
トラディショナル 87172350万円250万-400万円

高級時計の資金化記事でも、これら3大ブランドの一般的な特徴を整理しています。

質入れ可能額の目安

超高額時計の場合、査定額の70-90%程度が質入れ可能額の目安です。

借入率は超高額帯ほど高い傾向

通常のブランド品は査定額の60-80%が一般的ですが、超高額時計は査定額の80-90%まで借入できるケースが多くあります。理由は、質流れ後の換金性が高く質屋側のリスクが低いためです。

借入額の実例

ノーチラス5711(査定額2000万円)なら借入可能額1600-1800万円。月利1.5%で月24-27万円、3ヶ月で72-81万円の質料が発生します。

ロイヤルオーク15500ST(査定額900万円)なら借入可能額720-810万円。月利1.5-2%として月10.8-16.2万円、3ヶ月で32.4-48.6万円の質料です。

売却ではなく質入れを選ぶ3つの意義

3大ブランドのような相場が動きやすい超高額時計では、売却して現金化する前に質入れの選択肢を検討する価値があります。

値上がり益を取り損なわない

ノーチラス5711やロイヤルオークは生産終了・需給逼迫で年率10-20%の上昇が続いてきた局面があります。売却すると以後の値上がり分は自分の手を離れますが、質入れなら保有継続のまま資金だけを引き出せます。月利1.5-2%の質料コストと相場上昇率を比べたうえで、上昇局面では「売らずに借りる」が有利になりやすい構図です。譲渡所得税の発生も避けられるため、短期資金需要の解決手段として相性が良い方法です。

シリアル番号が中古市場に出回らない

3大ブランドは個体追跡が進んでおり、Chrono24等の中古DBにシリアルが登録されると過去の所有履歴が公開市場に晒されます。完済して取り戻した時計はそもそも中古市場に流れません。質流れとなった場合でも、自社販路(実店舗・限定オークション)中心の質屋であれば、シリアルがオンラインDBに登録されるリスクを抑えられます。コレクション銘柄の市場流通を避けたい所有者には、売却よりも質入れが筋の通った選択になります。

必要な分だけ借りて利息負担を最小化

査定額は借入の上限であって、満額借りる必要はありません。査定2200万円のノーチラスを担保に取った場合でも、必要額が1500万円なら借入を1500万円に絞ることで質料負担を約3割抑えられます。月利は借入元金にのみ発生する仕組みのため、購入対象や資金需要に対して過不足ない金額を組み立てるのが基本です。「カードローンの極度額を全部使い切る」発想とは別物で、超高額時計を担保にする強みは「必要な分だけ大きく借りられる」設計の自由度にあります。

ケース1:ノーチラス5711で1500万円借入

経営者Aさん(48歳)は、事業拡大の頭金として1500万円が必要。ノーチラス5711(査定額2200万円)を担保に、必要額の1500万円だけを借入しました。査定額(借入上限1870万円)を満額使わず、購入対象に対して過不足ない金額に絞ったことで、月利が乗る元金を抑えています。

月利1.5%、3ヶ月で67.5万円の質料。事業の売上回収後に元金1500万円+質料67.5万円を返済し、ノーチラスを取り戻しました。売却すれば譲渡所得税の対象だった相場上昇分を、保有継続によってそのまま自分のものとして残せた点も、質入れならではの利点です。

ロレックス売らずに資金化記事でも、譲渡所得税回避の論理を詳しく解説しています。

ケース2:ロイヤルオークで800万円借入

時計コレクターBさん(55歳)は、別の超高額時計の購入資金として800万円を必要としていました。ロイヤルオーク15500ST(査定額1100万円)を担保に借入額800万円を即日確保。Bさんはロイヤルオーク自体を手放したくなかったため、売却ではなく質入れを選び、シリアル番号を中古市場に晒さずに資金化しています。

3ヶ月後にコレクション内の別ピースを売却して資金繰りし、ロイヤルオークを取り戻しました。コレクション拡大と既存ピース保有を両立する典型的な活用法です。

ケース3:ヴァシュロンで500万円借入

医師Cさん(60歳)は、医療機器導入の頭金として500万円を質入れで調達。オーバーシーズ4500V(査定額650万円)を担保に、借入額500万円。

医療機器のリース契約成立後、リース会社からの初回支払いで質屋への返済を完了。銀行融資の審査期間(2-3週間)を待たずに即日資金化できた点が、質入れの最大の利点でした。

超高額帯対応の質屋を選ぶ4つのポイント

1000万円超の時計を扱える質屋は限定的です。以下の基準で選びましょう。

ポイント1:専門鑑定士の在籍

パテック・フィリップ・オーデマ・ピゲの専門鑑定士が在籍する店舗は限られます。事前電話で「○○モデルの査定対応可能か」を確認することが重要です。

ポイント2:在庫管理体制

超高額時計の保管には専用金庫・温湿度管理・盗難保険が必要。これらが整備された店舗を選びましょう。

ポイント3:高額借入の対応実績

過去の取扱実績は信頼度の指標。「これまでの最高借入実績」を聞いて、自分の希望額を超えていれば対応可能です。

ポイント4:質料の交渉余地

超高額帯は月利1.5-2%程度の優遇金利が適用されるケースが多くあります。複数店舗で見積を取り、交渉することで月利0.3-0.5%下げられる可能性があります。

質屋を初めて使う方へ

質屋(しちや)は 都道府県公安委員会の許可 を受けて営業する合法業態で、質屋営業法に基づき品物を担保にお金を貸し出します。

主な特長:

  • 返済できなくても取り立てなし(質流れで完結、品物の所有権が質屋に移転)
  • 信用情報機関に登録されないCICJICCKSC への照会・登録なし)
  • 本人確認のみで審査不要(職業・収入・信用情報を問わない)
  • 30分〜1時間で現金化(来店即日対応)

質屋は対面取引が原則のため、最寄りの店舗を確認するのが第一歩です。質屋営業法の概要や利用方法の全体像は 質屋が初めての人向け完全ガイド で詳しく解説しています。

FAQ

Q1. パテック・フィリップは質屋でいくらまで借りられますか?

A. モデル次第ですが、ノーチラス5711なら1500万-2500万円、カラトラバなら300万-500万円が目安。査定額の80-90%が借入可能額です。

Q2. ノーチラス5711の相場はなぜ高いのですか?

A. 2021年に生産終了が発表され、供給ショックで相場が高騰。需給逼迫が解消されない限り、現在の高値水準が続く見込みです。

Q3. ボックス・保証書がないと査定はどう変わりますか?

A. 超高額帯ではボックス・保証書なしで査定額が10-20%減少するケースが多くあります。可能な限り付属品を揃えて持ち込みましょう。

Q4. 並行輸入品でも質入れできますか?

A. 可能です。ただし正規品との相場差は10-15%程度ある場合があります。鑑定書(あれば)を持参すると査定がスムーズです。

Q5. オーデマ・ピゲのオフショアは相場が下落していると聞きましたが?

A. 一部モデルで2025年に相場調整が見られましたが、限定モデルやレア仕様は依然として高値で取引されています。事前査定で個別確認が必要です。

Q6. 超高額時計の質入れで信用情報に影響しますか?

A. 影響しません。質屋は質屋営業法に基づく担保ローンで、CIC・JICC・KSCへの照会・登録は行いません。

Q7. 質入れ中の時計は安全に保管されますか?

A. 質屋営業法に基づき適切な保管義務が課されています。超高額時計対応店舗では専用金庫・盗難保険完備が一般的です。

Q8. 質入れと売却、3大ブランドではどちらが得ですか?

A. 短期(3ヶ月-1年)の資金需要で相場上昇局面なら質入れが有利。保有継続で値上がり益を取り込みつつ、譲渡所得税の負担も避けられます。長期で相場下落リスクが高ければ売却。判断軸は時計投資家の戦略も参考にしてください。

Q9. 査定額の満額を借りる必要はありますか?

A. ありません。査定額は借入の上限で、必要分だけ借りる設計が基本です。質料は借入元金にのみ発生するため、購入対象や資金需要に対して過不足ない金額に絞ることで利息負担を抑えられます。

Q10. 質流れした時、シリアル番号は中古市場に出回りますか?

A. 店舗の販路次第です。自社販路(実店舗・限定オークション)中心の店舗ならシリアルがオンライン中古DB(Chrono24等)に登録されにくく、コレクション銘柄の市場流通を避けたい所有者には有利。販路は事前に質屋へ確認しておくのが確実です。

まとめ:超高額帯は専門店選びが査定額を決める

3大時計ブランドの質入れは、専門鑑定士の在籍する質屋を選ぶことで、査定額が10-20%変わる可能性があります。1000万円超の時計を扱う場合は事前電話で対応可能性を確認し、複数店舗で見積を比較しましょう。

お住まいの地域の質屋はエリアから質屋を探すから検索できます。超高額帯の取扱実績を確認し、最適な店舗を見つけてください。


最終更新日: 2026-04-29